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オルヴァルHP・邦訳 【猫背的自己満足】 [ベルギーのビール]

有言実行。オルヴァル修道院ホームページの、ビール醸造に関する部分だけ邦訳しました[ぴかぴか(新しい)] これ以外の部分(修道院の歴史など)はまたいずれ気が向いたらやりま~す。

あっしの本業の意地とプライドに賭けて誤訳はない自信があります[パンチ] が、もし何か明らかな事実誤認や固有名詞のミスがあったらぜひお知らせくださいませm(_ _)m

ではどうぞ[グッド(上向き矢印)]


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オルヴァル醸造所

当醸造所は法律上は修道院から独立した有限会社であるが,修道院とは密接な関係がある。

●醸造所は修道院のコミュニティに属するものである。
●修道院の土地の中に建てられているために,醸造所の営業方針はコミュニティの価値観に適合させる。(特にその質と倫理的な広報に注意を払っている)
●特許権使用料から得られた収入は現在,慈善的援助と修道院の土地の維持管理に利用されている。
●当醸造所を訪れる条件は以下の通りである。
・単なる旅行者ではなく、ビールの流通に何らかの関係を持っているか,または醸造所に属していること
・週末に限る
・要予約
・入場料無料



オルヴァルの歴史の中における醸造所

オルヴァルの長い歴史を通して,おそらく醸造所は常に修道院に存在していたと思われる。様々な事実がこのことを裏付けている…昔の文書にある地形に関する記述,300年前にフランシスコ修道会の訪問者が残していった,詳細な醸造方法の記述,修道院のほど近くに「ホップ・フィールド」と呼ばれる場所があること。ブドウ栽培にはあまり向いていないこの地域では,ビール醸造を行うことは慣習となっていたのだ。ビールは何よりもまず,その栄養価の高さで重宝されていた。ビールは「液体のパン」と呼ばれていたのだ。

1529年に皇帝Quintは,戦争による損害を修復するために必要な費用をまかなうために,鋳造場を設立することを修道士に認めた。それ以来オルヴァルは常に,共同体の基本的な経済のために必要不可欠な活動以上の経済活動を重視してきた。

それから130年以上経ってオルヴァルが廃墟の状態から再興し始めた時,修道院の再建という大きな仕事にはかなりの費用が必要だった。そこで,以前の鋳造場の役割を担うものとして,醸造所が設立されたのだ。

したがって1931年には醸造所は,修道士のさらなる経済活動のために設立されていたわけではなかった。修道士達はすでにパンやチーズをつくっていたからだ。醸造所は設立当初から信徒以外の人を雇った。最初の醸造主任はPappenheimerというドイツ人で,彼はVillers-devant-Orvalに埋葬されている。

この非常に独特なビールの起源はPappenheimerと,同時期に醸造所で働いていたベルギー人のHonoré Van Zande と John Vanhueleに求められるだろう。彼らは大胆であった。彼らが考案した醸造方法は,他のどこにもないものであった。インフュージョン法(*1)やドライホッピング法(*2)といった方法は英国で用いられるものである。おそらくこれはJohn Vanhuele氏が,長年の間住んでいた英国から導入した方法である。このことが結果として,モルトよりもホップと酵母に負うところが大きい特徴的なアロマとテイストにつながるのである。醸造の秘密と同様に,今でもおなじみの独特のグラス,瓶,ラベルもまた1930年代初頭に起源を求められる。

※ 猫背注
*1 インフュージョン法… 麦芽のデンプンを糖化する際に、温度を一定に保って糖化する方法。
*2 ドライホッピング法… 煮沸時だけでなく貯蔵・熟成時にもホップを投入する方法。




オルヴァルの醸造法

パブのカウンターや家庭でビールを楽しむ時に,ビール醸造の過程がいかに複雑であるかに思いを馳せることはおそらくないだろう。

醸造士が腕をふるうよりずっと前に,大地は農家からの少々の助けを借りて,大麦とホップという収穫物を生み出す。この二つの植物が栽培される地域と,栽培中の気候が,後に醸造士がビールを造る時に用いる方法に大きな影響を与える。

このように栽培されている間に,下層土の様々な地層によってビール醸造に用いられる水が形成されていく。
収穫が終わると大麦は醸造士が示すスペックに従って,モルターによって処理される。ホップはまず最初に乾燥されて,そのまま,またはペレットや濃縮物に加工された後に包装される。というのは,ペレットや濃縮物にしたほうがホップの長期の保存に適しているからだ。ビールの醸造とは料理法,化学,生物学の複合でもあるのだが,厳格な技術も要求されるのだ。

繊細な作業の連続の中には,2つの主な段階がある。最初が「製麦」,次が「醸造」だ。また,それぞれのビールの種類を特別なものにしてくれるいくつかの構成要素もある。それは,水,麦芽,糖,ホップだ。

ビール醸造には5つの作業が必要だ。
・まず,デンプン源が必要だ。主に大麦の麦芽であるが。
・次に,麦芽の穀粒がデンプンを遊離させるために粉状に挽かれる。
・そして,この粉が単糖に変えられる。
・糖をアルコールに変えるために酵母が加えられる。
・そして,希望に応じてその液体が熟成されて,最終的に濾過される。

この一連の作業の最後に,ビールが手に入るのだ。甘いものに苦いもの,淡色のものに濃色のもの,濁っているもの、澄んでいるもの、発泡しているもの,アルコール度数の高いもの低いもの。以上が世界中の醸造士が用いる基本的な醸造法である。

麦芽はその挽きやすさ,ほのかな甘味,香り,若干のカラメル風味,そして色といった点で大麦とは異なる。オルヴァルを醸造するためには,ペールモルトと少量のカラメルモルトが用いられる。2007年8月に落成された新しい醸造所は,オルヴァル醸造所と協同しているドイツ人技師と,ベルギー大学によって創りあげられた先進技術の最先端である。

コンクリートの貯蔵庫に貯蔵されたモルトは,まず不純物を取り除くために洗浄され,それから湿式粉砕法として知られる方法で粉砕される。この作業の間,マチルダの泉から汲み上げられた水が65℃の温度で粉砕機に注がれる。この方法で,穀粒の中に含まれるデンプンが遊離される一方で,麦芽の殻が麦汁の濾過に用いられるフィルターの役割をできる最適な状態で残される。マッシュは糖化槽に移される前に,破砕機から新しく設置された二つの濾過槽に直接汲み出される。この方法は新しい醸造所を設計する際に,英国のインフュージョン法の伝統を満たすために採用された。糖化中に麦芽の粉と水の混合物は絶え間なく攪拌される。以前はこの作業をするために醸造士が熊手を用いて行っていた。現在は糖化槽にマッシュの攪拌機を動かすモーターが取り付けられている。醸造士は混合物の温度を注意深く見守っている。

インフュージョン法のおかげで,甘い麦汁が数時間で得られる。この麦汁は濾過された後に煮沸槽に移されて,そこでドイツ産とスロベニア産のホップで殺菌と風味づけが行われる。1時間後に琥珀色の麦汁が得られる。この作業の間,煮沸によって発生した水蒸気は熱交換器で濃縮され,このようにして取り戻されたエネルギーは35㎥の水槽に蓄えられる。蓄えられた99度の熱水は熱源として用いられ,こうすることで温室効果を減らしている。

麦汁はすでに殺菌されているので,煮沸槽から取り出される時には汚染されないように注意しなければならない。実際に,窒素質を豊富に含んだこの甘い液体は、バクテリアにとっては格好の温床なのだ。だが麦汁は酵母の投入に適した温度,酵母が死んでしまわない温度にまで冷却されなければならない。沸騰している麦汁は前もって消毒されたプレート式冷却機で,空気を取り込まないように急速に冷却される。こうして冷却された麦汁の中に,液体状のキャンディシュガーが発酵タンクに移される前に投入される。

冷却された麦汁は円筒/円錐形の発酵タンクに移され,純粋培養された酵母が投入される。酵母によって発酵が起こされると特定されたのは1830年のことだ。ドイツ人科学者Mayerーはこの顕微鏡でしか見えない生命体を分離して,「砂糖を食べるキノコ」という意味の「サッカロマイセス」という学名を与えた。パスツールに続き,Daneとハンセンが低温で発酵する純粋酵母の分離に成功し,その後「上面」酵母として知られる酵母が分離されたが,オルヴァルで用いられるのはこの上面酵母の菌株である。酵母が投入されると麦汁は激しく発酵し,表面は泡で覆われ,最後には酵母で覆われる。主発酵は4~5日間続く。酵母は15度~23度で活発に活動し,発酵中は泡とともに表面に浮かんでくる。

発酵が終わるとまだ濁りのある若ビールは熟成タンクに汲み上げられ,そこで熟成され,濁りがとれ,炭酸ガスを含むようになる。熟成期間は15度で2~3週間続く。この熟成タンクの中に,醸造所の研究室で注意深く保管されている酵母が加えられる。後の段階でこれらの酵母が発酵する中で,オルヴァルに特徴的な,わずかな酸味のある特別なキャラクターが与えられる。この熟成タンク内での二次発酵と,香りを高めるために加えられる新鮮なホップにより,ビールに比類なきテイストが生まれるのだ。

ホップはビール作りに用いられる調味料の顔ぶれの中では新参者なのだが,様々な利用法のある植物に由来するものだ。ホップは医療目的で利用されていたことが知られているが,産業としての規模でホップが栽培されるようになったのはビール醸造のためだ。最も評価の高いものは,バイエルン地方のハラタウ,スロベニアのシチリアンゴールディング,アルザス地方のStrisselspaltである。これらのホップがオルヴァルの風味づけに用いられている。瓶詰めされる前にオルヴァルは,浮かんでいる死んだ酵母やホップの粒子を取り除くために遠心分離機にかけられる。この工程の間に液体の砂糖と新鮮な酵母が加えられ,瓶内で再発酵のプロセスが始まる。

瓶詰め工程は高度に機械化されていて,1時間あたり26000本の瓶詰めが可能である。

3~5週間の間,オルヴァルは15度に調整された貯蔵庫に置かれ,瓶内で再発酵する。この過程は主発酵と同様のものだ。発酵で生じた炭酸ガスがビールに溶け込み,クリーミーな泡の形成に貢献する。

醸造されて数回の品質チェックをされた後2か月を経たのち,ようやくオルヴァルは醸造所を旅立つ。下記の注意事項に従うならば,オルヴァルは飲むものに喜びをもたらしてくれるだろう。
ビールはワインと同じ理由で繊細な飲み物であるので,光を避けて10度~15度の温度で保管する。注がれる時もこの温度にして,専用のグラスに注ぐ。瓶底の澱(沈殿物)は瓶に残し,分けて味わう。

味覚の感動はビールの貯蔵年数に応じて微妙に増してくる。新しいオルヴァルは新鮮なホップの香りが特徴的で,フルーティな香りと力強い苦味を持っている。半年を経過したものに比べると口当たりも軽く,泡も固くない。半年を経過したものは酵母の香りと昔ながらのホップの香りが混ざり合った華やかな香りがある。苦味は弱まり,酵母とカラメルのフレーバーを伴い,わずかな酸味を持つテイストになる。半年以上経ったものは澱を除いて注がれると,特に澄んだ色をしている。ただし,7~8度より低い温度で注いでしまうと、透明度が損なわれる。

瓶詰めした日付と賞味期限は直接ラベルに示されている。消費者はこのようにしてオルヴァルの年齢を知ることができる。そして,自分が若い状態のものが好きなのか,またはセラーの中で数ヶ月,または数年を過ごしたものが好きなのかに応じて,そのオルヴァルがすぐに飲まれるべきか,またはそうでないかを知ることができるのだ。


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