シュレンケルラ ラオホヴァイツェン 【時間に溶け込む麦酒】 [ドイツのビール]
今日はドイツのビール、ヘラー醸造所のシュレンケルラ ラオホヴァイツェンです。
すさまじく長い商品名です 順に説明いたします。
このビールはドイツ中央部の小さな街、バンベルクにあるヘラー醸造所が地元の酒場「シュレンケルラ」のために造っているビールです。で、店の名前をそのままいただいて「シュレンケルラ」と呼ばれております。
では、「ラオホヴァイツェン」とは。「ヴァイツェン」ってのは日本でもおなじみの小麦ビールです。その前にくっついとる「ラオホ」とは「煙」を意味するドイツ語です。なんとこのビールは、ブナの木のチップで燻製した麦芽を用いて造られているビールなんですよ
日本の大手メーカーのビールで、この製法で造られたものは一つもありません。クラフトビールでも富士桜高原麦酒や猪苗代ビールなどが造っているくらいです。それぐらい日本人には馴染みのないスタイルです。というか、これ、本当にビールとびっくり仰天すること間違いないないです。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
このあたり、前回の記事のBREWDOGのPARADOX LONGROWと共通するものがありますな。
ラオホビールは醸造用の麦芽をスモークすることによって香りをつける。PARADOXはウィスキー樽でビールを熟成させることによって、ビールにウィスキーのスモーキーな香りを乗せる。ウィスキー製造に用いる麦芽はピート(泥炭)でスモークされてますからね。
ブナのチップで直接乗せるか、ピートのスモークを間接的に乗せるか。どっちにせよ、日本人のビール観からは想像もつかないビールですな。まさに歴史の勝利
かたや自然発生的に多種多様なビールを長~い間造り続けてきた文化。かたや半ば官製のピルスナーばかりを飲まされ続けてきて、つい最近になって「何だ、ビールって金色とは限らないのか」と気づきはじめた文化。これからたっぷりいろんなビールをエンジョイしましょうよ、後者
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
猫背個人的にもこのラオホヴァイツェンは非常に思い入れの深いものです。あっしにビールの手ほどきをしてくれたビールの師匠が大好きなビールなのです。
師匠は昔どこかの店でこのビールの樽生に出会い、あまりのんまさにノックアウトされ、果てはこのビールを呑むためだけのドイツ旅行を決行したほど。首尾よくシュレンケルラでラオホヴァイツェンに出会った師匠は帰国後、まだビール初心者だったあっしを研修すべく向かったドイツビールの店でこう嬉しそうに語ってくれました。
何ともあったかいエピソードぢゃありませんか で、その話の直後に師匠はあっしに「じゃあ、いってみますか、ラオホ!」
こんな経緯で出会った初ラオホ。さぞかしんまかったのでしょうね~、という期待を華麗に裏切る発言をしていいですか。呑んだ時の猫背の素直な感想です。
「な・・・なんだこれ・・・ソーセージかよ・・・」
無理して全部呑みきったのですが、帰りの電車の中も、家に帰って風呂に入ってても、ず~っと鼻先にソーセージぶらさげてるみたいな不思議体験。正直んまいとは思いませんでした
ですが、最近こんな文を目にしました。
「1リットルのグラスを10杯呑まないとすばらしさがわからない人もいる」
有名なビール評論家、マイケル・ジャクソンがラオホビールについて評した言葉です。そういえば今目の前にあるラオホが10リットル目ぐらいにあたるのかもなあ、と思いながら栓を開けました。
師匠がドイツで出会った新聞片手の老人に気分だけでも近づこうと思って、本を片手に。辺見庸の「もの食うひとびと」をチョイスしました。もの食うひとびと featuring ラオホ食らう猫背。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
いただきま~す
香りは相変わらず燻製のソーセージ。かなり存在感あります。
呑む ん~ヴァイツェンらしいクローブ香がぽわっと香ります。そこからはソーセージのような燻製の香りが長~く続くんだろうなあ・・・と思っていたら、ヴァイツェンならではの心地よい酸味が登場 ヨーグルト様の酸味とほのかな燻製香がゆ~ったりと続きます。ややクセのある燻製香がヴァイツェン由来の酸味できれいに洗われていく感じ。さわやかですらあります。
生まれて初めてラオホを心からんまいと思いました。師匠は「ラオホメルツェンではなくてラオホヴァイツェンなんですよ!」と力説していたのですが、その意味がやっと今日わかりました。
ドイツのおじいちゃん打ち負かすべく「よし、1時間はかけよう!」と無意味な目標を立てたのですが、余裕でクリアできました。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
クセのある燻製香のおかげで(せいで?)、ごくごくごくとは呑めない。ごく、がいいところ。それも口の容積の7割くらい。
でもその「ごく」が届ける心地よいトリップ感がムダな高揚下降なく静か~に続く。夜更けの時間に自然に溶け込む。むしろ、このビールが時の移り変わりを注げる時計になっている。
ビールはどちらかと言うとテンションアップのための道具、みたいなポジションづけがされていますが、このビールは見事な例外のうちの一つと言うべきでしょう。心を落ち着けて、思考に耽りたい、時間に身を委ねたい、そんな気分にぴったりのビールです。
すさまじく長い商品名です 順に説明いたします。
このビールはドイツ中央部の小さな街、バンベルクにあるヘラー醸造所が地元の酒場「シュレンケルラ」のために造っているビールです。で、店の名前をそのままいただいて「シュレンケルラ」と呼ばれております。
では、「ラオホヴァイツェン」とは。「ヴァイツェン」ってのは日本でもおなじみの小麦ビールです。その前にくっついとる「ラオホ」とは「煙」を意味するドイツ語です。なんとこのビールは、ブナの木のチップで燻製した麦芽を用いて造られているビールなんですよ
日本の大手メーカーのビールで、この製法で造られたものは一つもありません。クラフトビールでも富士桜高原麦酒や猪苗代ビールなどが造っているくらいです。それぐらい日本人には馴染みのないスタイルです。というか、これ、本当にビールとびっくり仰天すること間違いないないです。
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このあたり、前回の記事のBREWDOGのPARADOX LONGROWと共通するものがありますな。
ラオホビールは醸造用の麦芽をスモークすることによって香りをつける。PARADOXはウィスキー樽でビールを熟成させることによって、ビールにウィスキーのスモーキーな香りを乗せる。ウィスキー製造に用いる麦芽はピート(泥炭)でスモークされてますからね。
ブナのチップで直接乗せるか、ピートのスモークを間接的に乗せるか。どっちにせよ、日本人のビール観からは想像もつかないビールですな。まさに歴史の勝利
かたや自然発生的に多種多様なビールを長~い間造り続けてきた文化。かたや半ば官製のピルスナーばかりを飲まされ続けてきて、つい最近になって「何だ、ビールって金色とは限らないのか」と気づきはじめた文化。これからたっぷりいろんなビールをエンジョイしましょうよ、後者
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
猫背個人的にもこのラオホヴァイツェンは非常に思い入れの深いものです。あっしにビールの手ほどきをしてくれたビールの師匠が大好きなビールなのです。
師匠は昔どこかの店でこのビールの樽生に出会い、あまりのんまさにノックアウトされ、果てはこのビールを呑むためだけのドイツ旅行を決行したほど。首尾よくシュレンケルラでラオホヴァイツェンに出会った師匠は帰国後、まだビール初心者だったあっしを研修すべく向かったドイツビールの店でこう嬉しそうに語ってくれました。
「地元のおじいちゃんが一人で新聞持って入ってきて、このビールを注文するんだよ。で、席に座ってゆ~っくり新聞読みながらビールをちびちび飲んでて・・・1時間かけて飲み干したよ。こういう老後を過ごしたいなあ、って心から思ったよ。」
何ともあったかいエピソードぢゃありませんか で、その話の直後に師匠はあっしに「じゃあ、いってみますか、ラオホ!」
こんな経緯で出会った初ラオホ。さぞかしんまかったのでしょうね~、という期待を華麗に裏切る発言をしていいですか。呑んだ時の猫背の素直な感想です。
「な・・・なんだこれ・・・ソーセージかよ・・・」
無理して全部呑みきったのですが、帰りの電車の中も、家に帰って風呂に入ってても、ず~っと鼻先にソーセージぶらさげてるみたいな不思議体験。正直んまいとは思いませんでした
ですが、最近こんな文を目にしました。
「1リットルのグラスを10杯呑まないとすばらしさがわからない人もいる」
有名なビール評論家、マイケル・ジャクソンがラオホビールについて評した言葉です。そういえば今目の前にあるラオホが10リットル目ぐらいにあたるのかもなあ、と思いながら栓を開けました。
師匠がドイツで出会った新聞片手の老人に気分だけでも近づこうと思って、本を片手に。辺見庸の「もの食うひとびと」をチョイスしました。もの食うひとびと featuring ラオホ食らう猫背。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
いただきま~す
香りは相変わらず燻製のソーセージ。かなり存在感あります。
呑む ん~ヴァイツェンらしいクローブ香がぽわっと香ります。そこからはソーセージのような燻製の香りが長~く続くんだろうなあ・・・と思っていたら、ヴァイツェンならではの心地よい酸味が登場 ヨーグルト様の酸味とほのかな燻製香がゆ~ったりと続きます。ややクセのある燻製香がヴァイツェン由来の酸味できれいに洗われていく感じ。さわやかですらあります。
生まれて初めてラオホを心からんまいと思いました。師匠は「ラオホメルツェンではなくてラオホヴァイツェンなんですよ!」と力説していたのですが、その意味がやっと今日わかりました。
ドイツのおじいちゃん打ち負かすべく「よし、1時間はかけよう!」と無意味な目標を立てたのですが、余裕でクリアできました。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
クセのある燻製香のおかげで(せいで?)、ごくごくごくとは呑めない。ごく、がいいところ。それも口の容積の7割くらい。
でもその「ごく」が届ける心地よいトリップ感がムダな高揚下降なく静か~に続く。夜更けの時間に自然に溶け込む。むしろ、このビールが時の移り変わりを注げる時計になっている。
ビールはどちらかと言うとテンションアップのための道具、みたいなポジションづけがされていますが、このビールは見事な例外のうちの一つと言うべきでしょう。心を落ち着けて、思考に耽りたい、時間に身を委ねたい、そんな気分にぴったりのビールです。
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